作品収蔵：愛知県美術館

栗原は茨城県生まれの1935年から2009年までの生涯を画家として歩み、女子美術大学洋画科を卒業後、1961年の作品『リズム』が朝日ジャーナルの表紙に採用されるなど、早期からその才能を認められました。特に1966年から1968年にかけてのフランス留学は彼女の画風に大きな影響を与え、印象派以前の古典絵画の技法に学び、具象風景へと転じたことで知られています。

栗原喜依子作、「秋月」油彩 3号
この肖像画は、栗原喜依子によって描かれたもので、日本の洋画家として知られる彼女の独自のスタイルと技術が反映されています。

本作品に描かれている女性は、彼女の特徴的なモチーフである女性像の一例です。1974年頃から女性像が主な主題となり、栗原喜依子の作品世界の中心を成しました。この肖像画においても、静謐で内省的な雰囲気が漂い、穏やかながらも深い感情が感じられます。女性は鮮やかな赤いベストを着用し、彼女の表情は控えめでありながら、見る者に強い印象を与えます。

画面の背後に広がる草原と満月は、地に足のついたリアリズムと幻想的なロマンティシズムが交錯する、栗原喜依子ならではの世界観を表しています。彼女の画法は、フランス留学中に研究した下塗り技法などが活かされており、その緻密で繊細なタッチは、愛知県美術館を含む多くの収蔵機関で評価されています。
静かながら力強い存在感と、繊細な感性を鮮明に捉えた彼女の筆致は、現代においても多くの人々に感動を与え続けています。画伯の美人像の名画です。